腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんへるにあ)
概要
背骨(腰椎)の骨と骨の間に椎間板(ついかんばん)というクッションの役割をする軟骨があります。この椎間板が後方へ飛び出し、神経根を圧迫・炎症させることで、腰痛や下肢のしびれを引き起こす病気です。原因の多くは加齢による椎間板の変性ですが、重い物を繰り返し持ち上げる動作やスポーツなども関与します。一度の動作で起こることは少なく、もともとの変性に加わって症状が出ることが多いです。発症しやすい部位は第4腰椎と第5腰椎の間が最も多く、20〜40代の男性に多く見られます。
症状
- 腰の痛み
- 片側の下肢の痛み(坐骨神経痛)
- 下肢のしびれや脱力感
重症例では運動麻痺(足首が上がらないなど)、排尿・排便障害(膀胱直腸障害)が出ることもあります
診断
- 身体診察で神経症状(筋力・感覚・反射など)を確認
- X線(レントゲン)検査で骨の変形や不安定性を確認
椎間板自体は写りませんが、ヘルニアを推測する手がかりになります。
MRI検査で椎間板の突出や神経の圧迫部位を詳しく評価し、確定診断を行います。
治療
まずは保存療法(手術をしない治療)が基本です。
絶対安静は不要で、症状に合わせた短期間の安静の後、徐々に日常生活へ復帰します。
薬物療法
- 消炎鎮痛薬(NSAIDs):炎症と痛みを抑える
- 神経痛改善薬(プレガバリン〈リリカ〉・ビタミンB12):しびれや神経痛を緩和
- 硬膜外ブロック注射:強い下肢痛に有効
物理療法・リハビリ
- 温熱療法(ホットパック・マイクロ波)で血流改善、牽引療法で局所安静
- 痛みが軽くなったら、ストレッチや体幹筋のトレーニングを徐々に再開
日常生活の注意
- 重い物を持つときは身体に近づけて持ち上げる
- 長時間同じ姿勢を避ける
- 痛みが落ち着いたら軽い運動(ウォーキング、ストレッチ)で再発予防が大事です。
- 腹筋・背筋を鍛え、腰への負担を減らす
次のような場合には手術療法を検討します。
- 保存療法を1〜3か月行っても強い痛みが改善しない
- 麻痺(例:足関節背屈不能)が出現している
- 膀胱直腸障害(排尿・排便の異常)がある
手術では、飛び出した椎間板を取り除くヘルニア摘出術(除圧術)などを行い、神経の圧迫を解除します。
経過と再発予防
多くの方は保存療法で改善し、手術を必要としないケースがほとんどです。再発を防ぐためには、正しい姿勢の維持と体幹筋の強化が重要です。腰に違和感を感じたら、早めに整形外科を受診しましょう。
