前十字靭帯損傷(ぜんじゅうじじんたいそんしょう)
概要
膝の中には、関節の前後の動きを安定させる前十字靭帯(ACL)があります。この靭帯は膝関節が前方にずれないように制御する重要な靭帯です。スポーツ中のジャンプの着地や、急な停止・方向転換などの動作で強い負荷がかかると、靭帯が部分的または完全に切れて損傷します。受傷時に「ブツッ」と音(POP音)が聞こえることがあります。同時に半月板損傷などを伴うこともあります。
症状
- 受賞直後の強い膝の痛み・腫れ
- 歩行困難
- 運動中膝が「ガクッ」と力が抜けるような感覚(膝くずれ)
- スポーツの動作(ジャンプ・切り返し)がしづらくなる
診断
- 身体診察で靭帯のゆるみなどを確認
- X線(レントゲン)検査で骨折などを除外
- MRI検査で靭帯の断裂の有無や、半月板・軟骨の損傷を評価
治療
まずは保存療法(手術をしない治療)から開始します。
- ケガの直後は安静・アイシング(冷却)・圧迫・挙上(RICE処置)
- 装具療法で膝の安定性を保つ
- リハビリで太ももの筋力を強化し、関節の動きを改善
保存療法で十分に安定性が得られれば、日常生活に支障がない場合もあります。
ただし、スポーツ復帰を希望する方や膝くずれを繰り返す方では、手術療法(関節鏡下前十字靭帯再建術)が必要になります。
リハビリと復帰
スポーツ復帰まではおおよそ6〜9か月が目安です。
無理な早期復帰は再断裂のリスクが高まるため、慎重に進めることが重要です。
予防と再発予防
- 太もも・おしりの筋力トレーニング(特にハムストリングス)
- ジャンプ・着地のフォーム改善
- 柔軟性を高め、膝にかかる負担を分散
- スポーツ前後のストレッチを習慣化
前十字靭帯損傷はスポーツ選手に多いケガですが、早期診断と適切なリハビリで、多くの方が元の競技に復帰できます。膝の「ガクッとする」感覚や腫れがある場合は、早めの受診をおすすめします。
